遺品整理業者の選び方 — 「ごみを誰が運ぶのか」を答えられる業者を選ぶ
公開: 2026-08-27|運営: ubusuna works
この記事の結論
遺品整理業者を選ぶ決め手は、料金の安さでも資格の肩書きでもなく、「ごみになる分を、誰が、どの許可・制度で運ぶのか」に答えられるかどうか。産業廃棄物の許可だけでは家庭ごみは運べず、無許可業者とのトラブルを国民生活センターが名指しで警告している。
誰向けか: 実家の遺品整理をどの業者に頼むか、見積もりを取る前の人
- 買取をうたう業者なら、古物商許可の番号を表示しているか
- ごみになる分の行き先(市区の粗大ごみ・自治体の許可業者・自己搬入のどれか)を明記しているか
- 「家庭の不用品を回収します」を売り文句にしていないか。東京23区では区が「できません」と明言している行為である
遺品整理の業者選びで最初に調べられるのは、たいてい料金と口コミである。ところがこの業界のトラブルの中心は、料金でも接客でもなく、もっと手前にある。運んではいけない者が、運んでいる。
国民生活センターは2022年に、こう警告した。
一般家庭から出る廃棄物の収集・運搬には、廃棄物処理法に基づく「一般廃棄物処理業の許可」または「市区町村からの委託」が必要ですが、産業廃棄物処理業の許可のみの事業者等、一般廃棄物処理業の無許可業者とのトラブルが目立ちます。
(国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」2022-11-02公表・原文。同発表によると、この種の相談は2018年度の1,354件から2021年度の2,231件へ増えている)
産業廃棄物の許可を掲げている業者なら大丈夫だろう、と読めた人は、もう一度上の引用を読んでほしい。名指しされているのは「産業廃棄物処理業の許可のみの事業者」そのものである。産廃の許可は事業活動から出る廃棄物のためのもので、家庭から出る遺品には効かない。
資格の肩書きでは見分けられない
では何を見ればいいのか。よく挙がるのは「遺品整理士」の資格だが、これは一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する民間資格で、廃棄物を運ぶ法的な権限とは別の話である。持っていることは学習の証にはなっても、上の警告への答えにはならない。
もう一つの定番が古物商許可である。こちらは意味がある。形見や家財を買い取る営業には古物営業法の許可(都道府県公安委員会)が要り、番号を表示しているかどうかで買取の適法性は確かめられる。ただし古物商許可が答えてくれるのは「売れる物」の側だけだ。遺品整理で本当に量が出るのは、売れない側——ごみになる物である。
決め手はひとつの質問
見積もりの席で、こう聞く。「ごみになる分は、誰が、どの制度で運びますか」。
この質問への答えは、地域によって正解が変わる。東京23区には、家庭ごみを対象にした民間業者の許可がそもそも存在しない。大田区は「不用品回収業者は、家庭の不用品をごみとして処分することはできません」と言い切っている(大田区「不用品回収業者にご注意ください」更新2025-04-09・原文)。だから23区での正解は、区の粗大ごみ・臨時ごみに依頼者の名義で申し込む、あるいは自己搬入する、のどちらかしかない。業者にできるのは分別と搬出の手伝いまでである。
一方、川口市のように「ごみ・粗大ごみ」を対象にした一般廃棄物収集運搬業の許可名簿を公開している自治体では、市の許可業者への委託が正解になる(川口市・令和8年3月1日現在・30社)。この場合は許可番号まで答えられるはずだ。地域ごとの制度の違いは家庭の不用品の適法な出し方に自治体の原文つきでまとめてある。
つまり、良い業者の答えはこのどれかの形をしている。
| 答えの形 | 適法か |
|---|---|
| 「区の粗大ごみに、ご依頼者様の名義で申し込みます。搬出まではこちらでやります」 | ○ |
| 「○○市の許可業者(許可番号○○号)に委託します」 | ○(家庭系許可のある自治体) |
| 「買い取れる物は買取、残りは自社トラックで全部持ち帰ります」 | ✕ の可能性が高い |
| (答えられない) | 候補から外す |
「全部持ち帰ります」が最も楽に聞こえるのが、この問題の厄介なところである。楽な答えほど、上の国民生活センターの警告の型に近い。
「無料回収」と「高価買取」の境目
売れる物を買い取るのは適法だ、と書いた。これを逆手に取り、実質はごみの引き取りを「買取」と呼んで許可を回避する形がある。環境省は、廃棄物かどうかは物の性状・取引価値・占有者の意思などを総合的に判断するとし、「有価物と称して法の規制を免れようとする事案」を安易に有価物と認めないよう自治体に示している(環境省「行政処分の指針について」平成25年3月29日)。壊れた家電の山に値段がつく、という説明には、この指針を思い出してほしい。
見積もり前の3分でやること
候補の業者のサイトを開き、3つだけ見る。古物商許可の番号があるか。ごみになる分の行き先が書いてあるか。「家庭の不用品、何でも回収します」が売り文句になっていないか。
3つめに当たる業者を外すだけで、国が警告しているトラブルの型からはほぼ離れられる。残った業者に冒頭の質問をして、制度の名前で答えが返ってきたら、そこで初めて料金の比較を始めればいい。
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